110

審判を下す刻
君をさらった雨音
切り刻まれた思考回路
過去のゆめ、きみはバク
最後まで孤悲に生きた人
やがて僕らはひとつになる
想いを告げる時には、もう、
逢魔が時に会いましょう
逢魔時(おうまがとき)…妖怪、幽霊など怪しいものに出会いそうな時間、不吉な時間
長い冬を越えられなかった僕らの愛
心に誓った夜が、私にもあったのだよ

120

降り続ける冷水
ただ、遅すぎた春に縋る
指先からお願いします。
必然の中の偶然を願って
歌声を忘れたオルゴール
最期の言葉が零れ落ちる
求めるな、しかし与えよ
深緑の奥に、無限の想いを見る
あなたの優しさはいつもずるい
こんな苦しみすら感じる想い、尽きるわけ無い

130

残された夏の思い出
銃口の向う側で笑う君
そして僕は失い続ける
赦されたいとは思わない
祈るべき神は自分である
夜明け前に殺しにいくよ
やがて狂気は呼吸を始める
変わらないと信じていた
どうか永遠に憎んで、そして忘れないで
忘れられるくらいなら一生消えない傷痕を

140

君のいない春
泣いても遅いよ
名作気取りのB級映画
俗に言う惚れたもん負け
優しい嘘はもう要らない
呼吸と同時に世界を殺す
指を絡める勇気まではない
カタツムリと並んで行こう
彼が求めたメロウ・アウト
mellow out…ゆったりする、リラックスする
私たちはそれによって死ぬでしょう

150

胸に宿る熱
夢を操れたらいいのに
甘い瞳で僕を見つめて
その愚かさを愛している
塗り替えたエンディング
抑えつけるのも限界だった
ゴミに見えても捨てられない物
傷つけられたくないから傷つけた
届けられない想いばかりが募っていく
つまずく振りでもしないと触れられない

160

愚かで美しい君へ
己の洞察力を呪う
なにもかも全て幻
数えきれない宝物
純情と欲情をもて余す
どうか忘れてください
きみはきっと魔法使い
その幻想を人は完璧という
ゴミ箱から送るラブレター
全力は格好悪いと思っていたのに

170

短すぎた季節
はき違えた強さ
この恋は永久に散る
雨に濡れたガラス越し
神様に見放される前に
矛盾だらけの世界を彷徨う
全身で泣いているようだった
愛みたいなものにしがみつく
祈りを捧げる者はもういない
彼女は雨上がりの空が好きだった

180

結び目の戯れ
見え透いた未来
共存は出来ない
飛び方は忘れた
亡んでゆく透明度
呼吸の仕方は知っている
愛を誤魔化すかのように
懐かしい歌が青春を連れ戻す
博愛によって輝き、博愛によって朽ちる
彼は幾たびの嘆息の後、青春に手を振った

190

静かなる発狂
あゝ、絶望の朝よ!
上ばかり見て歩こう
次の白夜びゃくやに君を抱く
白夜…真夜中になっても薄明になっているか、太陽が沈んでも暗くならない現象のこと。
少女はいつもうれいに沈む
愁い…心が重くもの悲しい状態
或いはそれが情であろうか
絶望は口を拓いて待っていた
寒さに萎んだ血管はやがて春を思う
テンポは無秩序、報せも無しに雪は降る
彼は僕の一歩前で、下手な口笛を吹いている

200

偽善者の同情
恋愛小説の美学
悪魔が運ぶ福音
不必要なしたたかさ
悪い奴ほど魅力的
僕はまだそれが怖い
麗らかな日に見送るよ
勝てる戦しかしませんよ
本当は知っているんだろう
ひどい後悔と憐憫れんびんだらけの人生だった

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