410

優しさと諦めの違い
時の記憶を超えていけ
ひどく間の抜けた理由で
不規則に昇華する悲劇
無表情の音律に翻弄される
死者の分だけ豊かになる世界
わたしが最初にすきになったの
置き去りの心臓は黙って脈打つ
ただの一度でも愛しいなんて
何かの間違い万々歳

420

あなたが朝を連れてくる
極論でしかきみを理解出来ない
譲歩を愛だと信じるあなたへ
恋しかった日々を忘れぬよう
その百年を越えてゆこうか
怠惰と欲望を信とする
静かで退屈で長ったらしい夜
幾度も繋ぎ止めた糸
歓喜する花唇
花唇…はなびら、花弁、美人の唇
ふてぶてしい恋心

430

感傷だけの涙
君と奇妙な夜
欲情を欲する
今この時が哲学
しなやかな皮膚
目もくれず火中へ葬る
イン・ザ・ナラタージュ
ナラタージュ…ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法
あなたの屈託はでたらめ
めまぐるしく絶え間なく愛して
目を瞑れば不幸なんて映らない

440

祈りの真似事
それでも必要として
廃残はいざんなくして実らぬ恋
廃残…人生に失敗して落ちぶれること
呼吸に合わせて世界が廻る
この恋はお口に合わないようで
捕らえられなかった面影に拍手
夜さえ目を背けるだろう
ぼくらの証は消え失せた
ただ誘われるままに
目の前のそれは道ではない、過去だ

450

野晒しの獣にも似た
転がり落ちるような愛
上手に騙されてくれるならば
このまま地獄まで僕と来て
絶望を音律に変える
君は白昼夢が好きだった
その傷を目印に
痛みを感じなくなった空虚さえ
愛しい、愛しいと咽び泣く愚かな心を
信じると誓って、誓ったのなら信じて

460

見せたい命がある
真綿で首を絞める
悪魔は罪状をふる
ろくでなしの持続性
きみの網膜は気味が悪い
存在していないのと同じ
人間活動の記録
非自己率を極める
けんもほろろな命
酔い問答の欲問答

470

ようやく夜が完成する
役立たずのままでいたい
暗闇を囁き沈黙を交わす
確信を消す仕草
理想論とその副作用
自衛細胞のほほえみ
行き過ぎた称賛
向かう先に果たして夜はあるのか
この浅ましい夜をどうしてくれよう
真実をスパイス程度に織り交ぜて

480

愚かしい場所で微笑んで
いろはにほへとで散っていく
行く道は雲に聞くさ
地獄までの道標
取り返しのつかない年月を経て
ちりぢりになって声を失った
確かに死にたいと思ったのに
誰も知らない処で生きたい
生き抜いてみたいんだ
つかえる情欲が口を塞ぐ
痞える…胸がふさがった感じ。邪魔なものがあったり行きづまったりして、先へ進めない状態になるのこと

490

君の名はきっと夏の季語
季節は懐かしさを捨てて
あの日の心音を返すため
語り継がれなくなった伝説
意に介さぬ場所で告げる
完璧でいることには疲れた
慣れた口振りで同情を誘う
またしても安らかに眠るのかい
嘘は見破られるためにあるみたい
朝日は雨のごとく、夢は塵のごとく

500

愛にかこつけて堕落する
救いようがない生き方
心臓から春が芽吹く
善意も偽善も全うせよ
自分にだけ優しくなれない
守られた分だけ後悔を吐く
言いなりになりたいお年頃
満ち溢れている不可解な謎
あるとき優しさの概念が消えた
否定し続けなければ生きられぬ

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